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闇色の魔珠 感想

このページは『闇色の魔珠』の感想ページです。

ネタバレなしレビュー

攻略キャラはグラン・ヴィクトル・キャル・シルヴァ・フィンの5人。共通ルートは短め、個別ルートはキャラごとにバッドとグッドの2種エンディングあり。
公式サイトの情報見る限り魔法学園ものという印象を受けると思いますし間違いではないのですが、全体から見て学園生活がメインである部分は短いです。
生徒であるヒロインに対し攻略キャラに教師がいることについてモヤッとする方もいるかもしれないのでそこについて少し言っておくと、少なくとも私はストーリー展開的に気になりませんでした。あまり詳しく言及するとネタバレになるので避けますが。
また、ヒロインの兄であるフィンについても、ヒロインは幼い頃にフィンの家に保護された養子でありフィンとは血のつながりがありません。

個人的にはボリュームなども含めて全体的に満足できました。

以下はネタバレ感想となります。クリア後の閲覧を推奨します。

グラン

忌憚のない意見を述べさせていただくとー……後手後手でございましたね……。あらゆることが。

グランルートでの恋以外の話のメインというか着地地点って、グラン父の死に伴うグラン母の乱心さらにアニスの暴走という一連の事件だったのですが。
これはたまたま私が最初にやったのがグランルートだったからもあるんですが、アニスが共通ルートで登場しないし初対面が既に暴走状態なので、なんかこう事態の深刻さやグランのつらさに気持ちが入っていかないんですよね……。アニスはまだ平穏な学園生活できてた時にちゃんと登場させてたらよかったんじゃないかなぁ。
アニスにもグラン母にも思い入れがほぼない状態でただただ事件に巻き込まれその加害者でもなければ直接の被害者でもなくかと言って探偵役でもない。こう言っちゃなんだけど盛り上がらない。なんならグランにもあまり思い入れられていない。
せめてもっとグランが活躍するシーンあって欲しかったですね。まぁここぞという場面でプレゼンス家の魔法を使うシーンはあったんだけども結局それってグランの先天的な血統の力であって……。血統以外のグラン自身の力ももっと見せ所あったらよかったのに。「グランほどの使い手は首都に何人もいない」とフィンに言わしめるほどの実力があるらしいけど、一方でグラン自身は「階級が三界なのは家名あってのオマケつき」とも言ってるし結局グランの実力が発揮されるシーンもほぼないので実力の程がいまいちわからず……。
しかもモテるのに理由が「家柄」で本人もそれを重々理解しているってのがね……なんか不憫……。

あと事件モノは好きなので最初ちょっとワクワクしてたのですが話がミステリ的な構造というわけではなかったので 犯人はアロンとかいう立ち絵もない人(誰?)だししかもそいつは議長が自動的に吊るし上げただけで主人公サイドが出る幕は無かったことに少々落胆……。あと、グラン父の死の真相もそんな深くツッコまれることなく終わりましたね。全クリしてみると、まぁ黒魔法の一族の仕業だろうなとは見当がつきますけども。
グランの人脈を駆使して怪しい人物を絞り込み、グランのパワーを活かして屋敷に乗り込んで(賢く要所要所最低限の労力で済ませる隠密プレーでもいいし正面から討ち入り殲滅する脳筋プレーでもよし)入手した証拠を議会で突きつけ、苦し紛れの抵抗もあっさりねじ伏せるとかなんかそういう能動的な行動と盛り上がりが欲しかった。

あとね、最初は、リカを親友の妹としてかわいがってる様子のグランがどのあたりでリカを特別に女性として意識して好きになるのかっていうのを楽しみにしてたんですけどこれも結局はっきりしないっていうか……。しかも初対面が入学後じゃなかったということが判明しいつから好きだったのかが余計に曖昧になってしまった。

キャル

おそらく結構強い名有りのボスキャラをキャルが魔法で退けるっていうアツい展開があって一番好きなストーリーです。キャルは魔法を使用するシーンが多いので詠唱を聞く機会が多いのですが刻名の「ナハシ・アイ・メルツ」って響きがわりと好き。

キャルって一人で生きる覚悟をせざるを得ない身の上のせいか追っ手への対応とか判断が早くて頼りになる。他の魔法を使ってるときに襲われたら対応が遅れるからなんでもかんでも魔法に頼らず刃物などの道具も使うとか。そういう何気ない生きる力が格好良い。クルムの里の人達を信用しすぎない方がいいって最初から感づいてるのも優秀。今思えばシルヴァのことをあえてリカに一切言わないあの人達マジ外道だよ(長老以外はまだ赦せる方だが)。

リカが逃亡してすぐキャルに捕まったとき、怯えて喋れないリカの口元に「話していい」って意味でキャルが指で触れるの、後々でリカが同じことしたりしてなんというか二人だけの特別な合図みたいになってるの良い。

まだ逃げ出した直後あたりの、泊まった宿でなんだかんだで同じベッドで眠ってしまってキャルは平然としてるけどリカがちょっとどきまぎしてるとこ好き。雨に濡れた服を脱いで乾かしてとか。手にもってた果実を指ごと食まれてどきどきとか。あの辺のシーンニヤニヤしてました。なんというか、リカのほうがわりと序盤からキャルのことを異性として意識してるシーンが多いのがおいしい。キャルもそれに悪い気がしないってか嬉しいってか引き寄せられるんじゃないかなと。勿論引き寄せられてるだけではないとは思うけど。

全クリしてから思うことなんですが、魔珠のことは何も解決してないし長老が健在のクルムの里で暮らしてる状況が怖い。キャルは結構優秀なのでリカのお腹に触れたときにでも何か異常を感じてなんとかしてくれると思いたい。
ついシルヴァのことを考えてしまうんですがリカが他の男の手によって里に戻ってその男と結婚前提で暮らしてるとかシルヴァの立つ瀬が一切無いことがツラすぎる……。まぁシルヴァはヴィクトルやフィンルートでも尽力してくれてるし最終的にリカの幸せを祝福してくれる気はするんだけどもうそれすらツラい……。

キャルもミガッド家の子息ってことはキャルとくっついてもリルモッドさんをお義父さんと呼べるのか…。良いな…。結局ヴィクトルと会わずじまいだったので打ち解けられたらよかったのになぁと思ってます。フィンルートとかではものわかりがよさそうな感じだったので、激昂せずに冷静に対話してくれそうな気がする。ヴィクトルルート序盤でのヴィクトルの荒れっぷりは、たぶん共通ルートの時点でリカに対してかなり好意を持ってたので我を失うほど衝撃受けてたのであって本来のヴィクトルはもっと理性的な人間だと思う。たぶん。リカ以外には。

ヴィクトル

あーーーーー顔と声が良いーーーーー
って登場する度に文章進めるごとに思ってました。

プレイヤーとしてはもう既にリカが黒魔法の一族ではないことも一連の事件の加害者ではないことも知っているわけなので、それを見抜けず見当違いな怒りをぶつけてくるヴィクトルには最初おいおい失望させてくれるなよ~って思ってましたが。リカに好意(しかもどうも初恋)を寄せつつあったからこそ慧眼が曇るほど動揺しているのだと思うとニヤニヤできます。後から明かしてくれるんですけど共通ルートでの相性占いのとき、実は嬉しく思ってたとかね……。この人キャラデザから受ける印象の5倍くらいちょろいし10倍くらいデレると思いました。あの甘い声が乗るのが大きいんですね。あの声は良すぎる……。佐藤さんの低音めちゃくちゃ好きです……。高音域も好きですけども……。

あと自分で「俺は衝動的で手が早い」って自己申告してきてそれに全く違わないの正直笑う。自分のことをよくわかってる……。全部リカが初めてのはずなのに……。普段あんな、規律と手順は何より大事みたいな顔をしておいて……。だがそれがいい許可します。あと邪魔だからって眼鏡外すのありがとう。それは私の健康に効くのでとても助かる。

途中アニスが出てきて驚きました。ヴィクトルとアニスのシーン楽しいので、共通ルート時点で入れといてくれたらグランルートでももうちょっと彼への思い入れができてる状態で臨めたのになぁ。このアニス見てると結構好きっていうかごめん正直グランより攻略したいと思いました……。チョコ好きなので口に突っ込まれても拒否らずとりあえず食べるヴィクトルかわいい。

途中シルヴァも出て来るんですが裁判中に「さすがにイラッとしましたよ」て議長に言い放つの好き。

ヴィクトルは魔法の力が弱いので魔法の力で敵を蹴散らすみたいなことはできないのですが代わりに弁論でボス敵を退けたの、これはこれでスカッとしました。検事さんみたいでしたね。ホレグ家の人間はやり方がやらしいということが手記とか読むとよくわかるので、パワーだけじゃ倒せないんですよね。その点ヴィクトルはパワーで太刀打ちできない分他にできる手を尽くしてるので。

ヴィクトルと結婚するってことはですよ、リカはリルモッドさんの義理の娘になるわけですよね。リカにとって父と呼べる人が増えるの良い…ビルシャは違いましたからね…。

シルヴァ

あーーーーーこれはねーーーーー……これは……
こんなんこのカップリングしか勝たんくなってしまうよね……
個人的にこのルートやるまでストーリーではキャルが良かったと思ってたし顔と声はヴィクトルが一番好みだったんですが
それら全て凌駕してリカとの因果の強さでシルヴァが先頭に立ってくる。
いやシルヴァも顔と声好きですけど、正直個人的に、生徒に手を出す教師キャラというものが守備範囲じゃなかったものだから侮ってた。でもこの人の本質はそんなんじゃなかった、教師キャラじゃなかったのよ……!
いや私、キャル×リカもヴィクトル×リカもすごい好きなんですよ、だけど、こんなん見せられたらリカはシルヴァと一緒になって幸せになってってなる……!

教師のときは一人称「僕」(これも好き)だったのが素だと「俺」になるんだけどリカへの二人称は素になってもずっっっと丁寧に「貴方」なの狂おしく好き……。「君」でも「お前」でもなく「貴方」なのが……。なんか、「あの日の小さなこども」を想って話してるんじゃなくて「いま目の前にいる自分にとって特別である女性」を想って話してるんだなって気がするしきっとそうだと思うんですよね。

シルヴァは1人2人くらいなら黒魔法の一族でも撃退できるらしいとはいえ魔法の力を持たないのでボス敵をやっつけるような展開はないんだけど、「母さんが、イシャが、お前が許したって俺は絶対に許さねえよ!!」のシーン熱くて良かったです。

荒れてたときは「抱ける」とか明け透けに言うし軽口で「抱き心地」がどうとか言うしはっきり恋人関係になるシーンでは「その覚悟があるのか聞きたかった」って言うのに、数年経ったシーンでまだ夜一緒に寝て何もしてないの、エーーーッ!?てなってたんですが。
語られる理由にすごく納得できたしこの人自己分析もそれを言語化して他人に伝えるのもうまいな……って思ってました。リカはリカで、シルヴァに対する愛情表現がめちゃくちゃストレートで結構グイグイ行くのが可愛い。リカもシルヴァも、お互いを大好きって言葉にして伝えるのを惜しまないしどっちもその表現が上手いのがいいなぁ。

教師やってた時の丁寧なんだけど投げやりで退廃的な感じも好きですし、やり場のない憤りを隠そうともしなかった時も好きですし、自分の本当の望みを理解した後の自然体も好きですし、幸福でない結末で見せる切実な愛情も良くて……1人のキャラでいったい何味楽しませてくれるの???他ルートで登場するときも教師モードだったり素モードだったり色々だけど全部好きなんだよもう……

正直クリアした直後に続けてもう1周したんですけど私いつもはそこまでしないんですよ……シルヴァルートは数周しても美味しさを味わえるわ……もうこの感想書いてる時点で3周はしてる

フィン

クリアするごとにちょこちょこ開放される、千年前に関する手記読んでると出てくる“名捨て”の存在が気になっていて、“語り部”の日記に出てくる血継ぎの魔法も気になっていたのでなんとなくそうかなとは思ってましたが……。
うーん……千年前からの因縁とかって個人的にわりと好物なんですけど……リカ自身については魔珠という接点以外千年前のこととはそこまで関係がないからな……。
前半特に名捨ての記憶に引っ張られてるときが多すぎて……「二度と裏切るな」とか軽率にラヘルと混同視されると途端にシラけてしまう。いやリカに関係ないやん、て。
あと、フィンは強キャラ設定なので、リカを狙う手先を蹴散らしたりビルシャみたいなそれなりの強敵を圧倒するボス戦みたいな熱い見せ場を期待したのですが
思ったより苦戦してるし思ったより大義名分ある戦いが回ってこないっていう……。途中結構長いこと戦線離脱してるし……。しかもリカを救出するという熱い展開においてフィンが担当できることの地味さ……。

フィンルートは他キャラが勢ぞろいでリカのために力を貸してくれるのが熱くていいんですけど、シルヴァのことが気になって気になってもう……ここからシルヴァルート入ろうよ???ってなる。
リカがクルムの里で目覚めたときシルヴァがいて、「誰か来ても家に入れないように。なにかあれば僕を呼んで」って言うの、もうね……。シルヴァルート以外のシルヴァってそんなに今のリカと交流してないはずだからおそらくはそんなに恋情があるってほどじゃないとは思うし、リカが他の人と恋していてもなんなら「彼女が自分らしく生きられる場所を見つけられてよかった」くらい思ってるんじゃないかなと思うんですけどそんなシルヴァだからこそ他ルートでシルヴァ見ると恋しくなるしルート直行したくなる。

フィンはなんなら一番好感もてるシーンが シルヴァルートで長老に天誅下し、シルヴァに魔珠を取り出す算段がありそうな様子を見て取ってから静かに退いていくところですね。名捨ての威圧感と、リカに対する愛情がうまく混ざり合ってるように見えて、個人的にはあの場面にフィンというキャラの一番おいしいとこが出てた。

雑感

名無し病事件についてあらゆるルートでずっと放置されてるので、最後のフィンのルートで真相明かされるのかなと思っていたんですが、立ち絵もないモブの犯行という口頭でサクッと説明済まされるような顛末でなんかこう……ミステリ好きな私としては少し肩を落としました。あと、リカを入学させるのって結局ビルシャからしたらリスクしかなかったはずなのになんで入学させた??ってのは色々わかってきたとき疑問だったのですがまさかのフィンの思いやりという思ったよりあたたかでシンプルな理由だったという……。
よく考えたらなんですが、11年前にシルヴァがあらゆる危険な勢力から幼い彼女を守りながら身を隠し続けることができたとは思いにくいしリカを大きくなるまでスターニス家で隠していてくれて、しかもシルヴァのいる学園に入学させてくれたなんて結果的にスターニス家はシルヴァ×リカ的にいい仕事してくれてるのでは???

エーリス議長はわりと重要なポジションにいるのに不自然なほど掘り下げされないので、千年前の記述に出て来る“血啜りの魔女”と関係するんだろうなとは思ってましたが、結局最後までそこまでの掘り下げはなくて戸惑う。フィンと同じように“血継ぎ”をしたカタルークなのかなとか思いもしたけどそれを裏付ける描写はなかったような……。
スペシャルコンテンツとして色んな人の手記で補完されてますけど、これをうまいこと各ルートで伏線として散りばめてたらもうちょっとエーリスのような敵にも思い入れできたのになぁ。オリエンスの地下研究室の話とか、学園生活してたときに「地下についてこんな怪談があるんだってさー」みたいな話でも出てきてたら後であれのことかーって思えてましたし。

えー最後に。発表からわりとずっと楽しみにしてたゲームなので、プレイできてよかったです。楽しめましたありがとうございました。
過去作はスイッチ移植してることを考えるとたぶん移植はすると思うのですが。移植に追加要素がつくという形でもいいけどFD欲しいなぁ。過去作はクラファンでFDが制作されたりもしているようで。
シルヴァルートなんてね、これ以上なんか足すことある??ってくらい綺麗にまとまってると思いますけどそんなの関係ねぇんですよシルヴァとリカのおはようから次のおはようまで仔細に鑑賞させてくれたらそれで良いんですよォ!

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